品川ロッキーが聖地になる日が来るとは…!
フリクションガール
noga先生がお送りする女子高生のボルダリングマンガ、フリクションガール。
音楽受験に失敗して落ち込んでいる女子高生、宇治原うららさんが主人公。
そんな彼女が高校での新しい友人、石鎚かおる(通称ギャオ)さんを通してボルダリングに出会い、新しい景色を発見していく物語です。
ただ単にボルダリングの楽しさや魅力を伝えるだけではなく、やや内向的だった少女が新しい友人やボルダリングを通して成長していく姿を丁寧に描いています。
丁寧に描かれているのは心境だけではありません。
やっぱりクライミングジムの描写は圧巻。ホールドの一つ一つが丁寧に描かれているだけではなく、クライミングジム全体が丁寧に描かれています。
モデルとなっているジムは品川ロッキー、通称品ロキ。
その書き込み具合は恐ろしいもので、ホールドを見るだけでホールドメーカーや品番まで特定できるレベルです。
他にも丁寧に書き込まれていたはずのクライミングウォールを大胆にぼかしたり、ストーリーが進むに従ってセットが変わっていたりします。
「このセット登ったわ!」ってマンガを読んでいてびっくりするくらいです。
内向的だった少女の成長とボルダリングとの出会いを描いた新しいタイプのボルダリングマンガ。ぜひチェックしてみてはどうでしょうか?
サイコーになる
フリクションガールの中ではボルダリング中に描かれる特徴的なアイコンがあります。
それが「火花」です。
バチバチとスパークする火花がホールドをつかむときやムーブの時に描かれています。
核心を耐える瞬間、ゴールマッチをする瞬間など火花が炸裂しています。
この火花を見た時、手汗がにじみました。
思うにこの火花にはいろいろな感情が含まれていると思うんです。
恐怖だったり、痛みだったり、興奮だったり、喜びだったり…
そういったごちゃまぜの感情を火花で表現しつつ、劇中では端的に一言で表しています。「サイコーになる」と。
ゴールホールドをマッチした瞬間に思わずホールドをぶっ叩いたり、核心ホールドを耐えたときに出る声にならない声が火花として表現されているんです。
ボルダリングの魅力を表現するために火花という比喩を用いている所にnoga先生のセンスとクライミングに対する誠実さが感じられます。
こういう火花が見える瞬間があるからこそボルダリングがやめられないのかも…とも思ってしまいます。
楽器とボルダリング
以前、こんな記事を書いたことがあります。
やっぱりボルダリングは指に優しくありません。
美容院に勤めている友人をボルダリングに誘ったことがあるのですが「指は商売道具だから悪いけど無理」とのことでした。
確かにボルダリングをやった翌日は指の曲がり方は油の切れた自転車のチェーンのようにギシギシします。
そんなボルダリングにうらら少女は挑戦します。高校までずっとピアノを弾いていたのに、です。
わたし自身、ギターやベースを趣味で弾いているのでわかるのですが、ボルダリングをした当日と翌日は楽器は触れないくらい指が傷んでいます。
ボルダリングをやっていたから指皮が厚くなっていてギターの押弦が全然苦にならないというメリットもありましたが、やっぱり演奏に対するデメリットはメリットを上回ります。
もし、うらら少女が音楽の道に進んでいたら絶対に選択しなかったボルダリングというスポーツを通して新しい道を進んでいくという決断が描かれているようです。
この本を読んでみて
ボルダリングの魅力を伝えているだけではなく、うらら少女の心境のかわり方も丁寧に描かれています。
ボルダリングに出会ってからおろしていた髪をポニーテールにしだしたのも変わり始めた心境の表現ではないでしょうか。
マンガは白黒ですが、カラフルなホールドを表現しようとしてる所も凄まじい挑戦とボルダリングへの愛を感じます。
あと要所要所に差し込まれるへチョって感じのデフォルメされたキャラクターが好きです。
もし興味があるのなら第一話が無料公開されています。
いいじゃんって思ったら、是非1巻を購入してみてはいかがでしょうか?
オブザベできるレベルのジムの書き込みに驚くと思いますよ。