脚を振ってカウンターバランスを操れ!これができれば脱初心者?!
腕や脚って結構重たい!
人の体のパーツごとの重さをざっくり量るとこのようになります。
- 頭部:10%
- 胴体:40%
- 両腕:10%
- 両脚:40%
もっと正確に言えば両腕はもう少し重く、両足はもう少し軽いです。体を傾けると頭部・胴体・片腕が移動するので、体重60kgの人が体を右に傾けると体重の30〜40%(最大24kg)が移動する計算になります。
こんなに重量が移動してしまうと、不安定なクライミングウォールで動かすと簡単に重心が移動しちゃいます。重心が移動すると体が回転して壁から体が離れていってしまいます。
重心を安定させるためにはどうすればいいのか?っていうと脚を腕とは逆側に振って移動した重心を取り戻すんです!こういったムーブのことをカウンターバランス系のムーブと言います。
カウンターバランス系のムーブって?
移動した重心を脚を振って重心を取り戻すムーブ・カウンターバランス系ムーブは主にこの3つがあります。
- アウトサイドフラッギング
- インサイドフラッギング
- ダイアゴナル
今回はイン・アウトサイドフラッギングのやり方を紹介していきます。フラッギングをマスターするには基本姿勢をマスターしておく必要があるので、こちらの記事で基本姿勢をチェックしておきましょう!
なお、ダイアゴナルは別の記事で紹介しているので、こちらの記事をどうぞ。
フラッキングの基本原理
まずは地上でフラッギングの練習をしましょう。フラッギングの基本原理は傾いた重心を脚で取り戻すってことでしたね。
Image:8 Neil Greshams Masterclass - Flag - YouTube
フラッギングの基本原理を順をおって見ていきましょう。
- 右足で片足立ちする
- 腕を左側に伸ばす
- 腕と体が傾いて重心が左側に移動(回転)する
- 重心を取り戻すために左脚を右側にフラッギングする!
重心が傾いているのにちゃんと片足で立てていますね。左側に移動した重心を脚で打ち消しているから出来るわけです。
上の画像では脚を体のお腹側に通しています。脚をお腹側に通すとインサイドフラッギングと言います。逆に背中側を通すとアウトサイドフラッギングと言います。
基本原理がわかった所で、フラッギングのやりかたを見ていきましょう!
フラッギングのやり方
地上での練習でフラッギングの基本原理の感覚をつかんだらクライミングウォールで練習してみましょう。まずはお手本のインサイドフラッギングです。
Image:8 Neil Greshams Masterclass - Flag - YouTube
クライミングウォールという不安定な足場でフラッギングをするのは難しいと感じるでしょう。基本原理の動きを思い出しながらやってみましょう。
- 片足でホールドに乗る
- 重心移動を見越して逆脚を反対側にフラッギングする
- 重心が移動なくなり、体勢がロックされる
- フラッギングしている方の腕を伸ばす
次にアウトサイドフラッギングを見てみましょう。
Image:Kneedrops & Flagging - YouTube
やりかたはインサイドフラッギングと同じですが、フラッギングする脚が背中側を通っていますね。
インサイド・アウトサイドフラッギングで重要なのが腕を伸ばしてからフラッギングするのではなく、腕を伸ばす前にフラッギングをしておくってことです。フラッギングする前に手を伸ばしてしまうと体が回転を始めてしまいます。
腕を伸ばす前に脚を大きく振り出して重心が移動した後の状態を作り出しておきましょう。
フラッギングのコツって?
フラッギングがうまく決まらない…どうしても体が回転してしまう…って人は足を壁にこすりつけること(スメアリング)をしましょう。足が壁に触れていれば物理的に体の回転が抑制されます。
それでも体が回転してしまう…って人は脚がピンと伸びているかどうかチェックしてみましょう。上の2つのお手本画像はしっかりと脚が伸びていますよね。これはテコの原理と同じで、遠くに脚をフラッギングすればするほど、少ない力で体の回転を防ぐ事ができます。
スメアリングすること、脚をピンと伸ばすこと。この2つがフラッギングのコツです。
インサイドとアウトサイドの使い分けは?
フラッギングにはインサイドとアウトサイドの2種類がありますが、どういった時にどちらを使うのでしょうか?これはクライミングウォールの傾斜やホールドによるのですが主に私は、
- アウトサイド:縦方向に移動するとき
- インサイド:横方向に移動するとき
って感じで使い分けています。
インサイドフラッギングでは体と壁の間に脚を通す隙間を用意しなければいけないのでスラブや垂壁では重心が離れてしまいます。そのため、体が壁からはがれてしまいがちなのであまり使いたくありません。
逆に傾斜のある壁ではインサイドエッジでホールドをしっかりと踏ん張って起きたいのでインサイドフラッギングを使うことが多いです。強傾斜壁でアウトサイドフラッギングをすると、脚がだらんと下がり、重心が壁から離れるのでインサイドフラッギングが安定します。
私の場合、使う頻度ではアウトサイド7割・インサイド3割って感じです。もちろんクライマーの得意不得意はあるので一概には言えませんが、アウトサイドフラッギングを多用するクライマーの方が多いのではないでしょうか。
フラッギングのメリットって?
フラッギングのメリットは足を入れ替えずに腕を伸ばすことが出来るってことです。初心者が押さえるべき基本ムーブとして「右手右足の法則」を紹介しました。
基本ムーブって右手を伸ばす時は右足をあげるってことなんですけど、フラッギングでは右手を伸ばすときでも左足をあげておいても大丈夫!ってことなんです。
上の画像をもう一度見てみてください。インサイドフラッギングでは右手を伸ばしているのにホールドに乗っているのは左足です。アウトサイドフラッギングの画像でも同じですね。
つまり次のホールドは左側だけど足を入れ替えるほどフットホールドが大きくない…とか足の入れ替えを少なくして腕力を温存したいって時にフラッギングが威力を発揮するわけです。ダイアゴナルでは足の入れが頻繁に起こりがちなのですが、フラッギングだと足の入れ替えをせず安定して腕を伸ばすことが出来るんです。
フラッギングの弱点とは?
決まれば格好いいフラッギングですが、初心者にとっては少し難易度が高いムーブになっています。というのもフラッギングを安定して決めるには、ブレない体幹と鋭いバランス感覚が必要だからです。
フラッギングは基本ムーブやダイアゴナルと比べて不安定な体勢になりがちなので、脚を遠くに振っておける下半身の筋力や体勢が傾かないように維持する体幹の筋力が必要です。初心者のうちはこういった筋肉やバランス感覚が育っていないので、難しく感じかと思います。
安定感ではやはり正対やダイアゴナルに劣るので、使い所を前もって考えておくべきムーブでもあります。
脱初心者のムーブ
フラッギングが出来るようになると登りの幅が一気に広がります。私の個人的な感想ですが2級以上と戦うようになってからフラッギングの出番が非常に増えました。
ほんの少しでもフラッギングをしておくだけで重心が落ち着き、腕への負担がグッと減ります。だからシビアなホールドでもグリップし続けることができるんですよね。
ボルダリング初めてすぐだと感覚も筋力も乏しいので、すぐにはマスターできませんが、バチッとフラッギングが決まった時の安定感と「クライミングしてる感」は抜群ですので、ぜひフラッギングを練習してみましょう!