いつもと違うシューズがたくさん
第1回スピードジャパンカップ
リードやボルダリングの大会は数あれど、スピードクライミングの大会が今回始めて日本で開催されました。日本ではまだまだ馴染みの薄いスピードクライミングですが、東京オリンピックではリード・ボルダリング・スピードの3種類の総合成績によって順位が決まりますので、決して軽視できない種別になっています。
スピードクライミングの特徴的なところは二人同時にすでに決められたコース(課題)をよーい・ドンで頂上まですばやく登るというところです。リードやボルダリングのように本番までどんな課題があるのかわからないというわけではなく、すでに公開されている課題をどれだけ早く登るかというのが他のクライミング競技と大きく異なります。
まだまだ日本でスピードクライミングの練習ができる施設が少ない中ではありましたが、スピードといういつもとは違うシューズや選手が見られて非常に興味深いものとなりました。
1位 池田 雄大
Image:第1回スピードジャパンカップ 決勝 - YouTube
スピードクライミング一筋の池田選手。初代チャンピオンに輝きました。解説では日本のスピードクライミングのレベルを底上げしたとも言われていました。相手の状況を見て自分のクライミングのスピードを変化させるという非常に落ち着いた、見ていて安心できるスピードクライミングでした。感情いっぱいに語る優勝インタビューが心に残りました。
2位 藤井 快
Image:第1回スピードジャパンカップ 決勝 - YouTube
今大会の最速レコードを準決勝で記録するも、決勝でスリップしてしまい惜しくも2位。それまで大きなミスもなかっただけあってもったいないスリップフォールでした。
3位 抜井 亮瑛
Image:第1回スピードジャパンカップ 決勝 - YouTube
15歳という若さ。アジアユース2018年チャンピオンでしたが、準決勝の序盤でまさかのスリップ。頭を抱えながら降りてきたのが印象的。ハーネスから落っこちないかと思うくらいひっくり返って悔しがっていたのでちょっとびっくりしました。
4位 楢﨑 智亜
Image:第1回スピードジャパンカップ 決勝 - YouTube
準決勝と3位決定戦で連続してミスをしてしまい、4位という結果になりました。印象的なのが準決勝課題。序盤で池田選手がミスしてこれは決定的か?!と思いきや終盤で自らがミス。失礼ながら実況が一番盛り上がった瞬間でした。
1 野中 生萌
Image:第1回スピードジャパンカップ 決勝 - YouTube
ボルダリング・ジャパンカップに続いて連続1位。なおかつ最速レコードを記録した野中生萌選手。ボルダリング・ジャパンカップのときと同じシューズで堂々の優勝を飾りました。
2 伊藤 ふたば
Image:第1回スピードジャパンカップ 決勝 - YouTube
安定感抜群のクライミングを見せてくれたのが伊藤ふたば選手。チャレンジャーとしての特権なのでしょうか。決勝前のリラックスした満面の笑みが印象に残っています。日本人女子で唯一の8秒台を記録していましたが、今回は2位という結果となりました。
3 野口 啓代
Image:第1回スピードジャパンカップ 決勝 - YouTube
他の選手がジャンプでゴールを取りに行くところを背伸びで取れちゃうリーチを活かした登りが特徴です。準決勝でミスがあり、惜しくも3位となりました。準決勝以外のミスが目立たなかっただけあってもったいないミスでした。
4 中村 真緒
二宮選手との決勝トーナメント戦ではなんと100分の1秒差で勝利を収めた中村選手。パタパタと両手を振り回して喜びを爆発させていたのが可愛らしかった。使用シューズはボルダリング・ジャパンカップのときと同じテナヤのオアシでした。あのときの落書きはまだあるのでしょうか?
コンペで見ないシューズが続々
海外のスピードクライミングの動画をちらほら見たことがあったのですが、あまりハイエンドシューズを使っていないようでした。そしてやっぱりジャパンカップでもハイエンドシューズはほとんど見かけませんでした。
一番多かったシューズがコブラ。20年以上前に発売されてから、私含め愛用者が多いスリッパタイプのシューズです。他にもローグやモックなどの履いていて痛くない、快適性の高いシューズがたくさん登場しています。スピードクライミングのコースにはガバが多く、細かいエッジングが求められないのでこういったシューズ選びになるのでしょう。
スピードジャパンカップを振り返ってみる
2人のクライマーが横に並んで競争するっていう見ていて白熱するのがスピードクライミングの面白いところですね。序盤リードされていた選手が、終盤で抜き返したり、100分の1秒差で勝負が決まったりと目が離せません。
タイムを求めるとミスが起きがちで、安定を求めるとタイムが落ちるというジレンマが見ていてわかる面白い競技です。1体1で戦うので序盤でリードしていても、終盤スリップだったり、逆に相手のミスで勝利を拾ったりと何が起きるのかわからないスリルもあります。
女子トーナメントでは、クライミング後にタイマーが作動していなかったという笑えないトラブルが発生しました。屋外だったからでしょうか。野中選手も屋外だったため、体を冷やさないことが大変だったと語っています。これからもっと施設が充実してくるといいですね。
5秒48。これが現状の世界記録です。日本記録はまだまだ6秒台。スピードクライミングではまだ途上国です。スピードクライミングとリード・ボルダリングは使う筋肉が違うため、なかなか両立が難しいのだそうです。オリンピック競技ではスピードクライミングだけで順序が決まるわけではないですが、これからどんな風にスピードクライミングが日本に根づいていくのか楽しみでもあります。