La Sportivaの製品のいくつかにはノーエッジシューズと呼ばれるクライミングシューズがあります。そのシューズは今までのクライミングシューズの常識であったエッジを丸く処理してしまっているのですが、果たしてその性能や特徴はどのようなものなのでしょうか?
現行のノーエッジシューズは3種類
今、購入できるノーエッジシューズは3種類しかありません。
一つ目がレースアップタイプのジーニアス。
二つ目がベルクロタイプのフューチュラ。
最後の三足目がスリッパタイプのマーヴェリックです。
の3種類です。過去にスピードスターというシューズがあったのですが、マーヴェリックに世代交代してしまいました。基本的に3級以上を対象にしたアドバンスモデルになっています。
もし3級と戦えるようになって来たら購入を考えてもいいかもしれません。
ノーエッジ=使い込まれたシューズ?
フューチュラのレビューによく「エッジの無くなってきたソリューション」という例えが出てきます。エッジが減ってきたというのはボロボロになってきたというわけではなく、エッジが減ってきて足に馴染んできた状態のことを指します。
だからフューチュラなどのノーエッジシューズは箱から出した段階で足に馴染んだ最高の状態でクライミングが開始できるということです。もちろんノーエッジシューズも多少は伸びますし本当の意味での足への馴染みは使い込まないと出てきませんが。
なぜエッジを取り除いて丸っこい形にしてしまったのかというと、単純に岩との足の指との距離を狭めてしっかりとホールドに乗り込めるようにという目的があったからです。
La Sportiva: the climbing shoes with No-Edge Technology - YouTube
かなり誇張がなされていますが、こんなイメージです。足指の周りを包むようにソールが貼られているのでつま先とホールドとの距離が少なくなっています。
従来のエッジングシューズはエッジのぶんホールドと足先に距離が出てしまいます。でもノーエッジシューズだとエッジがないぶん数ミリホールドに近づけます。この数ミリがクライミングで有利に働くとのことです。
ノーエッジシューズの得意分野!
どんなシューズもそうであるようにどんな壁、ホールドに強いシューズは存在しません。その例に漏れずノーエッジシューズにも得意不得意があります。
まず、ノーエッジシューズの得意とするところでは、のっぺりとした極小ジブスに乗り込むときに威力を発揮します。例えばこういうホールドです。
見るからに滑りそうなフットホールドでもシューズの丸みがホールドとの設置面積を増やしてくれるので自然と乗り込むことができます。下の図では壁面にググっとつま先が近づいているのがよく分かるかと思います。
La Sportiva: the climbing shoes with No-Edge Technology - YouTube
他にもノーエッジシューズの特徴として非常にソールが薄くできていてホールドの形を敏感に足に伝えてくれます。これを足裏感覚が良いと言います。ノーエッジシューズの特徴はこの足裏感覚が非常に鋭いというところですね。
乗る場所がなさそうなホールドでも足からの感覚だけで「あっ、ここにくぼみがある!」とわかった時は感動しました。鋭い足裏感覚がある場合、ギリギリのムーブの時でも「もうちょっとだけふんばれる!」とか「これ以上ずらすと滑る!」とかの状態がすごく分かりやすくシューズから伝わってきます。
足裏感覚が良いシューズはとても柔らかくできているのでスメアリングの時も靴自体が変形してホールドにべったりとソールを押し付けることができるので、非常に高いフリクションを得ることができます。この写真のように極小のエッジに乗り込むときにもシューズ自体が変形してホールドや岩面との接地面積を増やしているのがわかるかと思います。
La Sportiva: the climbing shoes with No-Edge Technology - YouTube
ノーエッジシューズの不得意分野…
得意があれば不得意があります。それが足裏感覚が良すぎるゆえのシューズの柔らかさです。柔らかすぎてシューズがクライマーの体重を支えてくれないのです。
これがどういうことかというと、足指や足裏の筋肉が十分に育っていないとホールドに安定して乗れないよってことです。エントリーシューズがなどは比較的硬いシャンクが入っているので足が正しい位置に乗っていればシューズそのものが足の形を維持してくれるので足の筋肉が疲労することがありません。
でもノーエッジシューズは違います。シューズが体重を支えきれないので、しっかりと足に力を入れて足の形を保たないと簡単に足が滑り落ちてしまいます。
他にも本当に小さいエッジには乗りにくいということがあります。まぁこういったエッジに乗るためのエッジングシューズがあるくらいなので仕方ないといえば仕方ないかもしれません。具体的にはノーエッジシューズのエッジの丸みより薄いホールドに乗る時は壁に穴を開ける勢いでシューズを壁に押し付けて変形させないとホールドに乗ることすらできません。
例えばこういう薄めのエッジが出ているホールドはノーエッジ特有の丸っこいエッジにより隙間ができてしまうので壁とホールドの隙間を狙うように足をおかないと滑りやすくなってしまいます。
実際のホールドで言えば、クレジットカードくらいの厚みのホールドに乗るような課題があるときは普通にエッジのあるシューズの方がいいと思います。
ノーエッジシューズはどんな人におすすめ?
まずノーエッジシューズは初心者や最初の一足目にはおすすめできません。というのも単純にホールドに乗るのが大変だからです。足の指や足の裏の筋肉が発達していない状態でホールドに乗ろうとすると疲れますし、ノーエッジシューズ自体、結構癖のあるシューズなので最初のシューズや3級以上の課題とまともに戦えない人は普通のエッジングシューズを買いましょう。
逆にお勧めできるのが3級に挑戦する基礎技術を身に付けたい!という人やスメアリングが上手くなりたいとか足裏感覚を鍛えたいという明確な目的意識がある人には向いているかもしれません。
特にマーヴェリックは柔らかいシューズなので足裏感覚と足の筋肉を鍛えるのにもってこいで、今期モデルで一押しのステップアップシューズとも呼ばれています。また、マーヴェリックを買うと黒と白のマーカーペンが付いてくるのでお得ですよ(マジ)。